厨子 / Buddhist alter
シンプルな厨子です。
厨子は家具の一種のように感じられますが、製作者としては少し違うように感じています。残っていく時間や人の思いの大きさに応えるためにも、多くの仕事を取り入れています。
箱部の仕口は上端=3方導付きの組継で、下端=包みの組継です。
それぞれ19枚の組継になりますが、ピッチは均等では無く、センターから端へ向かって細くなるようにしています。これは板の反る力を分散して受け止める工夫です。
背板は3枚の無垢板を本ザネ接ぎ(ホンザネツギ)で。
扉は観音の平戸で、閉めた状態で前から見ると無垢の板に見えますが、実は端嵌めを入れています。扉の反り、膨張収縮にも対応できるように取手も工夫して遊びが目立たないようにしています。
写真の樹種は山桜で、箱部は板目2枚ハギ、扉は柾〜追柾のブックマッチ、背板は3枚のスリップマッチで構成されてます。(樹種や材料の状態により都度変わります。)できる限り共材(同一の丸太から)で製作したいと考えています。
金物の仕様=蝶番は真鍮平角/TTS(綱島製作所)です。扉はキャッチが見えませんが、扉と戸当たりにネオジウム磁石を埋め込んでいます。
木工においては見た目がシンプルな物ほど、素材特性に対応させた作りにするには手が掛かる事が多いと思います。一つ一つの事柄は繊細で小さな違いに過ぎませんが、それらが集積する事によって、初めて長い時間変わらず存在できると思います。
size W 372mm × D 300mm × H 372mm
樹種 山桜
価格 ¥270,000(税込金額¥297,000)